同期コンデンサーによるグリッド安定性の管理
従来の発電方法から再生可能エネルギーによる発電が増えるにしたがい、安定したグリッド運用を維持する事が難しくなっております。
これは従来の同期発電機が減る事により無効電力、慣性、短絡レベルの調整が難しくなっているからであります。
グリッドオペレーターは、同期コンデンサーの使用などを含め、この問題に対する各種解決策を模索しています。
同期コンデンサーは(同期補償器とも呼ばれ)特に新しい技術ではありません。
同期コンデンサーは電力網がある場所にあり、20世紀半ばには発電所や変電所に広く設置されていました。
しかし、より大きな発電タービンや他のグリッド接続器の出現により十分な慣性と無効電力が提供された為に同期コンデンサーは使われなくなりました。
静止型無効電力補償装置(SVCs)や自励式無効電力補償装置(STATCOMs)などの発電機器技術はより安価で操業できる為、同期コンデンサーの立場を奪いました。
Synchronous condensers became a little bit out of favour when there was more and more power electronics engaged in the controlling of the power system. But power electronics have problems with all the new renewables coming in, because they cannot provide the short circuit support (voltage) and inertia support (frequency) in the same way,
— Christan Payerl, ABB
しかし、グリッドの慣性は、パワーエレクトロニクスだけではこれらのネットワークを効率的に安定させるには不十分であり、同期コンデンサーが再注目されつつあります。
同期コンデンサーとは?
同期コンデンサーは本来、荷重のかかっていないモーターか原動機につながっていない発電機です。
機器は大型で重量もあり、グリッドと同期することで、無効電力の発生や吸収、追加の短絡強度や機械的慣性を供給します。
典型的な同期コンデンサーのパーツは以下の通りです。
- 一体型ポール・テイツプスからなる固定子と回転子
- 冷却システム(水素、空気または水)
- 励磁システム
- 潤滑油供給
- 昇圧変圧器と補助変圧器
高慣性同期コンデンサーは従来の同期調相機と似ていますが、一般的にフライホイールによる慣性が付加されています。
グリッドに接続される同期コンデンサーの無効電力の定格は20〜200MVArで、メーカーによってはグリッド安定性のために350MVArまでにすることもある。
同期コンデンサーのメリット
- 長年にわたり実績のあるテクノロジーである。
- 回転する重機であり慣性の付与
- 数秒間で2倍以上の定格電力を供給する能力により、短期間の過負荷容量を増やすことができる。それにより、緊急時や不測の事態に対応するシステムサポートが強化できます。
- 極低電圧という不測の事態においても、接続の維持と信頼できる運用を提供します。
- 最新の励磁・制御システムにより、動的高速周波数応答(FFR)を提供します。
- グリッドへの短絡強度の提供
- 高調波の発生源ではなく、高調波電流も吸収します。
しかしながら、デメリットがいくつかあります。主に高い損失レベル、電気工学テクノロジーに比較すると、機械的摩耗や反応速度が遅いといったものです。
両者の長所を生かす
電力グリッドに配備されている同期コンデンサーは新しいシステムで、タービンメーカーから提供されているものですが、ある市場では既存の発電機を再利用して同期コンデンサーとして運用しているものもあります。
発電(通常はピーキング発電)とタービンと発電機の間に同期自動シフトクラッチを導入することで同期調相の両方に対応できます。
このシナリオではタービンで発電機を高速まで持っていきグリッドと同期出来る様にします。
この時点で、タービンは発電機から切断し、発電機はグリッドパワーを用いて回転し続けます。
クラッチは、無効電力が必要になると原動機と発電機を離脱させ、発電が必要になれば再度嵌合します。
既存の発電機が送電システムの適切な位置に配置され、すでに制御され運転している事実から、大幅な節約になっています。
さらに、このアプローチにより再生可能エネルギーによる発電の補完として、バックアップやピーク時の必要に応じた発電システムを供給します。— Dave Haldeman, SSS Clutch
ヴァージニア州のコモンウェルス・チェサピケ発電所の例です。
7基のGE・LM6000のガスタービンから構成され、総容量315メガワットで、2000年に設置されました
電力グリッドが発展するにつれ、これらの発電機は散発的にしか使用されなくなり、2001年にこのうち4基にクラッチが取り付けられる決定が下されました。それによりタービンは切断が可能になり、同期コンデンサーとしても稼働するようになりました。
グリッドオペレーターのPJM社は発電機をタービンに接続することなく、同期・回転させグリッドサポートの支払いをします。
グリッド内の他の場所で発電・送電停止の対応に電力が必要になると、通常、発電機は10分以内に再嵌合できます
嵌合や切断をするため、制御ソフトを使用しタービンを即座にほぼ同調スピードまで加速させます。切断しても発電機は回転を続けます。
これらクラッチはオリジナルのLM6000システムより、わずかに大きな設置面積を必要としました。
タービンと発電機間にクラッチのクリアランスを十分に確保するために、基礎と足場を数フィート拡張し、シャフトカプリングの追加が必要でした。
Paul Bernard、Operations & Maintenance Manager はこの程、TurboMachineryInternationalに対し、SSSクラッチは丈夫で問題なく20年以上稼働していると伝えました。
さらに同業他社にも瞬動予備力市場導入には同様のクラッチを組み込む発電機の改良の検討を勧めてくれている。